Interviewインタビュー

杉本 怜Rei Sugimoto

挑戦することの楽しさ。

北海道札幌市出身で、小学校3年生のときに道立の体育館にクライミングウォールができたという新聞記事を親が見つけて、父と一緒にチャレンジしに行ったのがクライミングとの出会いです。初めて体験で登り、すごく面白くて一気にハマり、いままでクライミングを続けています。その時挑戦したのは壁が15mほどのロープクライミング。最初は10mくらいまでしか登れず、すごく悔しかったのを覚えています。1週間、2週間と通い、4回目くらいに、ずっと登れなかった壁に登ることができました。そのとき喜びも大きかったのですが、次に挑戦した別のルートがまた登れなくて、また悔しくなって。無限に挑戦できて、それをクリアして行く面白さ、普段見ることのできない景色や感じられないスリルがあって楽しかったのだと思います。

プロとの出会い。クライミングへの熱。 プロという存在を意識し始めたのはクライミングを始めて半年くらいに、プロフリークライマーの平山ユージさんがいつも登っている体育館に講習会でいらっしゃったときでした。初めていつも見ているものと全然違うプロのクライミングを見て、そしてワールドカップの話を聞いて、「プロの世界があるんだ」と意識し始めました。このときの出会いは特別な思い出です。時が経ち、高校から大学へ上がる時期には、納得のいく成績が残せずプロを目指す気持ちはなくなっていました。大学に行き勉強と競技を両立しつつ、就職して趣味でクライミングを続けて行こうかな、くらいに思っていました。でも、競技をやるからには大学にいるうちは全力で取り組もうと思って。それが良かったのか、少しずつ成績があがり、ワールドカップに挑戦するために1年間大学を休学。ワールドカップでは自身最高順位を獲ることができました。その後復学し、大学3年生のワールドカップ最後のミュンヘン大会で優勝。そこからもっと挑戦したいという気持ちが芽生えたとともに、やり足りない部分がまだまだあるなと気がつき、プロになる気持ちが固まりました。

一手を完成させるために。

クライミングは一度で登り切れることは稀で、自分の限界ギリギリのものを挑戦するとなると、何度も何度も失敗します。失敗の度に「ここがちょっと違ったな」「こうすればできるかも」と考えるプロセスが大切なんです。僕はその試行錯誤がクライミングの一番面白いところだと思います。登り切った瞬間より、どうやって課題に取り組んできたか。端から見ていると何も変わっていない同じ失敗に見えることも「さっきより持てた感触がいい」といった違いがあって、なぜ違ったのか、体をどう動かしていたかなど自分で研究し、人からアドバイスを貰ったりしながら、気づきを積み重ねて一手が完成します。その一手を重ねることで、全てつながりゴールまで行ける。そういうことってどんなことでも重要だと思うんです。一つ一つ小さなことを積み重ねて、改善して行って、トライアンドエラーの繰り返しで成功まで辿り着く。奇跡的な成功もあるのですが、その奇跡を日々練習することでどれだけ必然にできるか。だから、登り切るより一手完成する方が僕にとって大きな進歩だったりしますね。

挫折から、上を目指すこと。

大学4年生のときに肩をケガして、人生で一番長いレストを強いられました。そこで競技を諦めるという選択肢もあったかもしれないですが、プロになるという決断をしていたので、もう引き下がれない、続けたいという気持ちが強かったです。1ヶ月間しっかり休んでリハビリも行い、復帰したジャパンカップでは優勝しました。しかし、それ以上の成績を目指すとなると肩が気になり始めて。その後、ワールドカップで5年ぶりの予選落ちなどを経験し、やはり手術を行うことに。まだまだ上を目指したいという気持ちがあって、ケガや手術で辞めようと思うことはなかったですね。それよりも高校3年生の頃の方が、スランプやタイミングで続けるかどうかを悩んでいました。でもそんなとき、周りの応援があったり、北海道の代表として出場した試合で優勝したり。小さいことに悩み過ぎだったのかなと思って、もう少し長い目でクライミングと付き合っていこうと考え直しました。

生まれながらのクライマーとして。

選手として、「杉本怜」ってまだいるんだぞ、強いんだぞと示し続けたいです。今ではワールドカップのメンバーのなかで最年長になり、下からどんどん追い上げがあって、そんな状況に泥臭く戦っていきたいと思っています。「まだあの親父いるのかよ」と言われるようなスタンスでいたいです。30代でワールドカップを優勝するような選手も世界にはいるので、そういった選手を目指したいですね。他にも自分が目標とする大会や課題がまだまだたくさんあるので、一つ一つ挑戦していきたいです。クライミングが好きで好きで仕方がない人間ですが、これからも良いパフォーマンスを見せられるように努力しますので、応援よろしくお願いします。

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